純資産(簿記の学習_09)

簿記3級を学んでいこうという連載の9回目です。前回の記事はこちらになります。

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この連載ではふくしままさゆき先生の動画を使って簿記3級の勉強をしていきます。 前回は「固定資産・経費等」について学びました。色々な仕訳が出てきましたね。

今回のお題は「純資産」です。以下の動画で学んでいきたいと思います。

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純資産

簿記3級で扱う純資産の勘定科目は

の3つになります。このうち今回扱うのは「資本金」のみです。「繰越利益剰余金」「利益準備金」については簡単に触れるだけにします。

資本金

今までの簿記3級は個人商店での経理でしたが、令和元年6月の試験から株式会社での経理が対象となりました。

株式会社は何かというと、株式を発行して投資家に買い取ってもらい、そのお金を運営資金として企業活動をする会社ということです。投資家は株主という立場になります。株主になると、株主総会で意見を言えたり、会社から配当金をもらえたりできます。株主は株式の買い取りを通してお金を出して(出資)いますので、簡単に言うと会社の所有者の立場になります(社長より偉い)。

会社法では登記をした時点で会社が設立されるのですが、簿記的には株式の発行スタートになります。それでは株式を発行して投資家に買い取ってもらう場合の仕訳例を見ていきましょう。

株式会社設立にあたり、株式10,000株を1株当たり1,000円で発行し、投資家から全株式の払い込みを受けた(当座預金に入金)場合の仕訳は

(借)当座預金 10,000,000(貸)資本金 10,000,000

となります。資本金は純資産に当たりますが、純資産は姿・形はないし、債権でも債務でもありません。続きの仕訳を見てみましょう。

設立から5年後に、さらに5,000株を1株当たり3,000円で発行し、投資家から全株式の払い込みを受けた場合の仕訳は

(借)当座預金 15,000,000(貸)資本金 15,000,000

となります。この様に会社設立後にさらに株式を発行して資金を得ることを「増資」といいます。

結果、この時点での会社の資本金は25,000,000円になり、この時点でこの会社は「資本金2,500万円の会社」となります。つまり、資本金とは「今まで出資された金額の累計値」なのです。

当座預金にあるお金は、その後の企業活動によって増減しますので、資本金とは一致せず、無関係です。資本金とは企業規模を測る参考値なのです。

株式会社とは何か

それでは株式会社とは何なんでしょうか?会社でない場合(個人事業主など)と比較するとわかりやすいと思います。

      個人事業主フリーランス 株式会社
始めるタイミング 特になし 会社法の通りの設立手続き
名前 つけなくていい 会社名を必ずつける
信用 一般的に低い 個人事業主よりも高い傾向
契約名義 個人名義 会社名義
役員 いない 必ずいる

個人でビジネスを始めて、儲かってきたら会社にする(法人化)流れが多いです。会社になったとたんに会社法に従って運営しなければならなくなります。つまり、簿記の学習でも会社法が絡んでくることになります。

繰越利益剰余金

繰越利益剰余金とは、決算整理仕訳の1つになります。

1年間の収益合計が5,000万円、費用の合計が4,000万円だったとすると、当期純利益は1,000万円になります。 これを損益計算書にすると

(借)費用    40,000,000(貸)収益 50,000,000
(借)当期純利益 10,000,000

となります。実際には以下のように仕訳します。

(借)諸収益 50,000,000(貸)損益  50,000,000
(借)損益  40,000,000(貸)諸費用 40,000,000
(借)損益  10,000,000(貸)繰越利益剰余金 10,000,000
  1. まず収益の合計を諸収益として損益に振り替えます。
  2. 費用についても合計を諸費用として損益に振り替えます。この時点で損益は1,000万円の貸方残になります。
  3. この損益の1,000万円を繰越利益剰余金として、貸方に付け替えます。

次の年も同様に仕訳をしていき、その年の繰越利益剰余金が2,000万円だったとします。 すると、繰越利益剰余金の合計は3,000万円となります。つまり繰越利益剰余金とは今まで得てきた利益の累積値なのです。 繰越利益剰余金には形がありません。債権でも債務でも権利でも義務でありません。

利益準備金

利益準備金は、会社法によって積み立てることが義務付けられている法定準備金の1つです。「繰越利益剰余金」の一部を「利益準備金」に振り替えなければなりません。

3,000万円の繰越利益剰余金のうち500万円を利益準備金とする場合の仕訳は

(借)繰越利益剰余金 5,000,000(貸)利益準備金 50,000,000

となります。これは単なる勘定科目の変更です。(会社法の都合)

銀行借入と株式発行による資金調達の違い

最後に銀行借入と株式発行による、資金調達の違いについてまとめました。

銀行借入による資金調達 株式発行による資金調達
返済義務 あり→負債となる なし→純資産となる
支払うもの 利息 配当
株主総会への参加 できない できる

負債となるか、純資産となるかが大きな違いですね。

次回は決算の全体像

いかがでしようか。純資産は形がはっきりしないのでわかりずらいのですが、これで少しは理解できたと思います。 次回はいよいよ決算です。お楽しみに!!

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