簿記3級を学んでいこうという連載の14回目です。前回の記事はこちらになります。
この連載ではふくしままさゆき先生の動画を使って簿記3級の勉強をしていきます。
前回は「決算整理」の3回目でした。「貸倒引当金の設定」について学びました。
今回は「決算整理」の4回目です。以下の動画で学んでいきたいと思います。
この動画では以下の2点について説明されています。
- 商品売上原価の算定(三分法の決算整理仕訳)
- 利益の会計処理
ここではこのうち、「商品売上原価の算定」について学びます。
商品売上原価の算定
以下に損益計算書の例を提示します。
収益から費用を引いた結果が当期純利益になります。それでは、どうして商品売上原価の算定が必要なのでしょうか。この内容は「商品売買での利益」と、「その他の取引で得た利益」に分けられます。
商品売買での利益ですが、ここで「売上高」は売った商品の売価の合計になります。「売上原価」は売った商品の原価の合計です。売上高から売上原価を引いたものが「売上総利益」になります。
次に、その他の取引で得た利益ですが「その他の収益」と「その他の費用」を合算して算出します。
商品売買での利益と、その他の取引で得た利益を合計した結果が「当期純利益」になります。
これらの勘定科目ですが、その他の取引で得た利益については記載されている内容そのままです。商品売買での利益の利益についてはどうでしょうか。これは分記法と三分法で異なります。
分記法の場合
分記法の場合は簡単です。期中の仕訳で「商品売買益」の勘定科目で出ています。この科目の合計が売上総利益になります。三分法の場合
三分法の場合、売上高の勘定科目は「売上」になります。それでは売上原価はどうなるのでしょうか。基本「仕入」が該当するのですが、修正が必要です。「仕入」は当期仕入れた分の金額が該当します。当期売れた分の金額ではありません。期首に前期の在庫が残っていることもあるし、期末に在庫が残る場合もあります。そこで仕入をベースにして修正する必要があります。
しーくりくりしー
三分法で売上原価を求める手順は、以下になります。
の手順で仕分けを行います。たとえば、当期末商品の棚卸高が200万円、前期末(当期首)商品の棚卸高が100万円の場合は
(借)仕入 1,000,000(貸)繰越商品 1,000,000 (借)繰越商品 2,000,000(貸)仕入 2,000,000
となります。繰越商品は資産の勘定科目です。「簿記の入門2(簿記の学習03)」で出てきました。この時、この勘定科目は普段使わないと説明しました。決算整理で商品売上原価の算定を行うときに使うんですね。「仕入、繰越勘定、繰越勘定、仕入」の順になるので「しーくりくりしー」と言ったりします。
仕訳の理由
では、どうしてこのような仕訳を行うのでしょうか。売上原価とは、売れた商品の仕入値です。
たとえば、期中に100円で3個仕入れた商品が、同じく期中に3個とも120円で売れた場合、売上原価は300円になります。
それでは同じ商品を期中に100円で4個仕入れて、期中に3個売れた(1個は売れ残った)場合の売上原価はいくらでしょうか。こちらの売上原価は300円になります。売上原価は以下の式で表されます。
当期仕入れ4個 - 当期販売3個 = 期末1個
この式を整理すると
当期仕入れ4個 - 期末1個 = 当期販売3個
となり、売上原価はこれに仕入値を掛けた300円になります。それでは次の場合どうでしょう。
同じ商品の期首在庫が1個ありました。期中に4個仕入れてトータル5個となり、そこから期中に3個売れた(1個は売れ残った)場合の売上原価です。この場合も300円になります。この場合の式は、
期首1個 + 当期仕入れ4個 - 当期販売3個 = 期末2個
となり、この式を整理すると
期首1個 + 当期仕入れ4個 - 期末2個 = 当期販売3個
となります。つまり売上原価は期首在庫に当期の仕入れ数を足して、期末在庫を足したものなのです。
仕入勘定について
上記のやり取りを仕入に関してみてみましょう。以下の形を「Tフォーム」または「T字勘定」と呼びます。
決算になった時点で、仕入の勘定は借方に400円になっています。この時の状態は、
(借)仕入(当期仕入れ) 400(貸)なし
次に期首の在庫を繰越勘定から除いて、仕入にする処理をします(「しーくり」)。すると以下の状態になります。
(借)仕入(当期仕入れ) 400(貸)なし (借)仕入(期首) 100
さらに期末の在庫を仕入から除いて、繰越勘定にする処理をします(「くりしー」)。すると以下の状態になります。
(借)仕入(当期仕入れ) 400(貸)仕入(期末) 200 (借)仕入(期首) 100
借方と貸方の差額が当期販売(売上原価)300円になります。
繰越商品勘定について
繰越商品勘定について見てみましょう。まずは1年目の決算時です。1年目ですので期首の在庫はありません。期中に1個仕入れたとします。仕入値は100円とします。「しーくりくりしー」を行うと、以下のようになります。
(借)仕入 0(貸)繰越商品 0 (借)繰越商品 100(貸)仕入 100
次に2年目の決算時です。期首在庫は1個、期末在庫は2個だったとすると仕訳は、
(借)仕入 100(貸)繰越商品 100 (借)繰越商品 200(貸)仕入 200
となります。以下は補足です。
仕入は費用の勘定科目で、損益計算書(P/L)に記載されます。前期末の損益計算書の残高は当期首時点で0クリアされます。流れていくので「フローの概念」と言ったりします。
これに対して繰越商品など、貸借対照表(B/S)に記載される内容は、前期末の内容が当期首にそのまま引き継がれます。積み重なっていくので「ストックの概念」といいます。
次回は利益の会計処理
いかがでしょうか。これで決算整理仕訳で行う処理のほとんどが終わりました。次回は利益の会計処理です。お楽しみに!!